格闘ゲームとゲームセンター

ゲームセンターの思い出⑤ 3か月越しのリベンジ! KOF97(1997年)

20年以上前、ゲームセンターへ通い格闘ゲームと出会った頃のお話し。

今回は第五話、前回からの続きです。

ゲームセンターで初めてKOFをプレイし、初心狩りにあってから3か月。

俺はゲームショップの片隅で、ずっと一人で練習を続けて来た。

ある日の朝、テリー使いへのリベンジを誓い、練習の成果と自信をひっさげ開店直後のゲームセンター50へ。

開店直後のゲームセンターには、相変わらず人はあまりいない。

開店待ちをしてまで熱心にゲームをしにくる変わり者は、俺ぐらいなもの。

3か月前のように、50円を筐体に投入した。

誰もプレイヤーのいない店内、独り占めの気分。

しばらく誰もこない時間。

一人でCPU戦をこなし、ラスボスを倒して全クリアーを果たす。

周囲を見渡すと、まばらに人はいるがKOF97をやる様子はない。

もう一度50円を投入した。

一戦、二戦とCPUを順調に倒していく。

(誰もこないな・・・)

せっかく練習したのに相手が来ない。

そう思い始めた頃、対戦台の反対側に人の気配。

数名が俺のプレイを見ている。

品定めをしているようだ。

お気に入りのゲームソフトを売り、ゲームショップ、ペッパーでの猛練習。

3か月間で覚えたことが4つある。

1つは、

”プレイを眺めてから乱入してくるタイプは、

 大抵自分より弱い相手を探している”

ということだった。

俺はおびき寄せる作戦をとった。

(もちろん、強い奴を求めてくる相手もいるが当時の俺はまだそういうタイプには会ったことがなかった)

品定めされているのを意識し、俺は簡単な連続技を繰り返した。

キャンセルを少なくして、コマンド入力の簡単な技ばかりだす。

たまにわざと失敗して見せる。

弱い相手を狩りたい”初心者狩り”なら、格好のカモとして認識するはずだ。

ちらりと反対側の一人が俺を覗いた。

黒い帽子だ。

間もなく、50円が投入され、対戦者が乱入してきた。

キャラクター選択のカーソルは、テリー・ボガードへ合わせられる。

リベンジを果たすべき相手が現れたのだ。

相手は俺を覚えていたのかもしれない。

一瞬だが目が合った。

始まる試合。

ペッパーで見知らぬ相手に何度も試合を重ね、対戦慣れはしてきた。

以前はわからなかったが、テリー使いはうまかった。

下手な行動が少なく、KOF97の悪名高いテリーの永久連続技を当てる為の動き。

ペッパーでの対戦相手のような、雑な動きがほとんどない。

いつの間にか緊張で手は汗ばんでいた。

動きがどうこうよりも、3か月前にコテンパンにやられた相手だ。

落ち着いて画面を見ながら、テリーの連続技を食らわないように必死でガードを固める。

ここで、ペッパーで覚えたことを思い出した。

覚えたことの2つめ、それは、

”牽制”だ。

リーチの長い技を、先端ギリギリを当てる。

近づかれないように相手の動きを制限する行動。

チクチクと牽制技を繰り返すと、相手は明らかにイラついてくる。

ここで、3つめのポイント、

”対空技”だ。

イライラした相手はジャンプしてくる。

俺の使うリョウ・サカザキは対空技が強い。

必殺技で、跳んでくる相手を落とせるし、しゃがんでパンチボタンを一つ押せば強力なアッパーもある。

テリー使いは、なんとか永久連続技を当てようとピョンピョンと飛び跳ねた。

これを丁寧に落としてく。

対戦台の向こうからイラついた声が聞こえた。

「うっとうしいんだよ! こいつ!」

グループで集まる連中は、気が大きくなって暴言を吐きやすい。

年上の集団の暴言に怯えながら、俺は冷静に対空を繰り返した。

すると、相手はしびれを切らす。

KOF97には、ABボタン同時押しで、緊急回避という動きができた。

ころんと前転する技だが、無敵時間があって、攻撃をすりぬけることができる。

牽制に対空にと、ちくちく対応する俺に、露骨な緊急回避で接近するテリー。

ここで、最後の4つめが活きた。

”前転は投げられる”

これをペッパーで発見したのだ。

普通なら、投げは、タイミングを合わせてボタンを押すと投げ外しという行動で、投げを防げる。

しかし、緊急回避中は”投げ外しができない”

投げを絶対に食らうのだ。

ここまでの攻略は全部、俺が自分で考えて発見したもの。

まだ携帯電話があまり普及しておらず、攻略サイトの存在も知らない頃だ。

ひたすらゲームを繰り返して、自分で編み出した攻略は確実に俺の力になっていた。

3か月間、テリー使い対策で俺が練習したことは全て発揮された。

一度食らえば死ぬまで続く連続技、どうすればいいのか?

それは、”一度も食らわなければいい”という極論だった。

もちろん、すべて成功したわけじゃない。

たまにジャンプ攻撃を許してしまい、

「パワチャ! パワチャ! パワチャ!」

画面端まで一気に運ばれ、

「パワーゲイザー!」

超必殺技でフィニッシュされることも。

けど、二人目、三人目でテリーを倒すと、このテリー使いはテリー以外それほどでもなかった。

何度も対戦を繰り返し、気が付けば5連勝していた。

ここでテリー使いは諦めて席を立つ。

「待ちやがって、やってらんねえよ!」

対戦台の向こうからそんな捨て台詞が聞こえた。

そして、ゲーム画面はCPU戦の続きへ切り替わる。

「勝った? あれ、勝った?」

呆気ない終わり際に、俺は呆然としてしまった。

事態が飲み込めずに、キョロキョロと辺りを見回すと、いつの間にか後ろに数人のギャラリーがいた。

「やるじゃん」

一人がそう呟いて反対側の対戦台へ歩いて行った。

全く知らない人だ。

けど、その人の言った

「やるじゃん」

という言葉が俺は嬉しかった。

この後、何人かの対戦相手と戦った。

ほとんどを勝ち、常連と思われる人たちに声を掛けられた。

「あいつ、ハメしかしてこないんだよ。あのテリー使い」

「あっちのゲーセンから荒らしにくる奴でさ」

「よく倒してくれたよ」

以前は気が付かなかったが、あのテリー使いはゲーセン50の常連ではないようで、他のゲーセンから、わざわざ初心者を狩りに来ていたらしい。

テリーの永久連続技が強力で常連たちも皆やられていたとの事。

「リベンジするために3か月練習してきました」

常連達と仲良くなり、上機嫌で彼らに言ったこの台詞。

常連達は驚いていた。

同時に、俺を認めてくれた。

常連の中には、ペッパーでずっとKOFを練習しているやつの噂を知っているひともいた。

俺は意外と見られていたらしい。

テリー使いへのリベンジを果たし、俺はゲーセン50に居場所ができた。

この日から、俺はゲーセン50で遊ぶようになり、格闘ゲームで初めて仲間もできた。

ここから20年以上も続く、格闘ゲームとの長い長い付き合いのはじまり。

そして、初めて自分の力で、自分のプライドを守り切った戦いでした。

ただただ、本気で戦う。

これが俺の、格闘ゲームの醍醐味。

おっさんになった今でも、まだまだ、やめられないですね。