格闘ゲームとゲームセンター

ゲームセンターの思い出④ ただ、勝つために! KOF97(1997年)

20年以上前、ゲームセンターへ通い格闘ゲームと出会った頃のお話し。

今回は第四話、前回からの続きです。

静かな店内。

入店してまず目にはいるのは、入口からまっすぐ、通路の壁を形成するように並ぶゲームハードが陳列されたショーケース。

発売されて間もないプレイステーションやセガサターンの本体やコントローラーがズラリと並ぶ。

左手に、背の高い棚が三列ほど並び、各ハードごとのソフトごとに陳列されていた。

俺は、反対の右手側にいた。

左側とは違い、右側はすぐに壁。

ゲームの陳列棚はない。

ゲームの棚の代わりに、入口のショーケースと壁の間、その狭い空間に押し込められるようにアーケードゲーム筐体が設置されていた。

店内は人気が少なく、喧騒とは無縁。

客がいても、商品を吟味する際に連れと一言二言交わす程度だ。

店内にはアーケード筐体から漏れた控えめな音量のBGMが流れている。

そんな中で、俺のスティックレバーの操作音がガチャガチャと響いていた。

ゲームショップ ”ペッパー”

小さな田舎町の、小さなゲームショップだ。

ゲーセン50での97テリーによる、執拗な初心者狩りに、俺はゲームセンターから追い出された。

それからしばらくは、KOFをプレイができなかった。

50円のゲームセンターがなかったから。

けど、諦めていた訳じゃなかった。

『絶対に強くなってやる!』

『あいつを倒す!』

心に誓った俺は、練習できる場所を必死に探した。

当時、家庭用ゲームで最新の格闘ゲームなど発売されない。

アーケードの稼働から、最低でも1年は経過しないと発売されなかった。

けれど、ゲーセンでは初心者狩りに会い練習できず、軍資金となる小遣いも、貧乏な我が家ではたかがしれている。

50以外で知っているゲーセンは全部100円で1プレイ。

練習に集中できる場所が欲しい!

50円じゃないとお金が足りない!

そんな切実な俺の願いを叶える奇跡の場所。

やっと見つけたのが、このペッパーだ。

狭い店内隅っこに置かれた数台の古い筐体の中に、たった1台だけ新作があった。

偶然にも、たった1台の新作、それがKOF97だった。

しかも、この店では、2プレイで100円。

100円入れると、強制的に2回プレイになる。

実質1プレイ50円だ。

このペッパーに、もう三か月近く通っていた。

一日200円まで。

これをほぼ毎日繰り返す。ひと月で6000円。

これは中学生の俺には大きな出費。

特に小遣いの少ない俺には破格だ。

俺の小遣いだと一週間ももたない。

けど、幸いここはゲームショップ。

金を作る方法があった。

俺は、大事なスーパーファミコンソフトをこのペッパーに売った。

今でこそありえないが、この当時は子供でもゲームが売れた。

身分証など必要なく、保護者がいなくても問題ない。

しかも、ソフト自体が結構な額になったのだ。

持っていたソフトのほとんどは売却。

FF4~FF6は特に高額。おかげで手にした潤沢な軍資金。

全て練習費用にあてた。

大事なソフトは無くなったが、得た物は大きい。

「極限流奥義! オラオラオラオラァ!」

俺の持ちキャラ、リョウ・サカザキの超必殺技が決まり、ラスボスを倒してエンディンが流れる。

パチパチッ

おもむろにボタンを押して、エンディングをスキップ。

100円2プレイ。

残った1プレイで早速また練習をする。

こんな感じでずっと練習していた。

おかげで、レバースティックには慣れ、連続技もできるようになり、ラスボスも倒せるようになっていた。

ひたすら練習する中で、自分なりの攻略も見えてきた。

ポロロンッ

100円の投入音。

対戦相手が乱入してきた。

見ず知らずの大人だ。

ゲームセンターとは違い、ペッパーの筐体は画面一つで椅子が隣同士に二つ置いてある。

肩が触れるくらい近い椅子。

赤の他人同士で二人並んで座り、何の挨拶もなしに対戦が始まる。

この対戦の仕方に、最初は面食らってしまい、余計に緊張して思う様に動けなかった。

しかし、一か月もしてすっかり慣れ、今ではほとんど負けなし。

この対戦者にも勝利。

残りの1クレジットで再戦してきたが、見事に返り討ち。

負けた相手は無言で席を立ち、しばらく俺のプレイを眺めてから帰った。

やれば負けるだけ。

ゲーセン50では狩られるだけだったが、いまじゃペッパーでは最強だ。

試合の合間に、画面が一瞬暗くなり、自分の顔が映った。

自信に満ちた表情の俺がいる。

小さなゲームショップの中、小さくとも自信は生まれる。

「だいぶ強くなった。今なら……!」

エンディングのスタッフロールを見つめ、俺は小さく呟いた。

自信の余韻、エンディングを飛ばさずに最後まで見守り、俺は席を立った。

次の週末、50へ行こう。

自転車に跨り、俺は決心した。

この三か月間の練習の成果を見せる時だ。

「次は俺が勝つんだ!」

帰路の登坂、ペダルを漕ぐ足はいつもより力強く、俺を前に前に進めてくれた。

ゲームセンターの思い出⑤ 3か月越しのリベンジ! KOF97(1997年)へ 続く