格闘ゲームとゲームセンター

ゲームセンターの思い出③ 初心者狩りとの遭遇 KOF97(1997年)

20年以上前、ゲームセンターへ通い格闘ゲームと出会った頃のお話し。

今回は第三話、前回からの続きです。

屈辱的な惨敗を期し、俺はリベンジに燃えていた。

日曜日の午前中、開店直後の50へ出向く。

休みの朝なら人も少ないはず。

人気のないうちにCPU戦で練習だ。

思った通り、開店直後の50は人気が少なかった。

ちらほらと筐体に人はいるが、2セットあるKOFの筐体にいるのは1一人だけ。

知らない人が練習している。

1セットはまるまる空いていた。

店の奥の両替機で、500円玉を全部50円に両替する。

昨日の雪辱を晴らすには練習して強くなるしかない。

ケチケチなんてしてられない。
(500円は、当時月の小遣いの半分)

両替機から最短距離で筐体に座る。

「よし、やるぞ」

50円を投入。

深呼吸し、手をほぐす。

まずは、アーケードならではのスティックレバーになれなければ。

CPU戦を着実にこなしていく。

一戦、二戦と勝ち進む中、店内には人が増え、賑わってきた。

俺がプレイしてる筐体に、コインが投入される音がした。

コインが筐体内へ落ちる音と、電子音がピロンッと鳴る。

ここで、早くも乱入者だ。

乱入者の登場に一気に緊張した。

「乱入者がいない時間帯を狙って、こんな開店直後にいるのに・・・」

そうは言っても、対戦は当然のこと。

対戦に勝つために練習しているんだ。

乱入者が使用キャラクターを選んでいる。

「テリー?」

そう、またテリーだ。

対戦台の反対側は見えない。

まさか同じ人ではないだろう。

テリーは人気があり、テリーを持ちキャラする人は多かった。

「ふっ! パワーチャージ!」

見覚えのある連続技。

そして、試合展開。

「パワーゲイザー!」

先日と同じ試合内容に愕然とした。

テリー一人に、俺の持ちキャラ三人はあっと言う間に負けてしまった。

また完封された。

まさか、テリー使いは皆同じ事をしてくるのか?

納得いかない内容に不満はあるが、俺は負けたので一度席を立った。

順番待ちで後ろに並んでいる人がいたら、負けた俺は邪魔になるからだ。

席を離れた際、相手を確認した。

対戦相手は知らない人だ。

俺を負かしたその相手は、横に座る誰かと会話しながら、俺から勝ち取ったCPU戦を戦っている。

CPU戦ではテリーではなく、他のキャラクターを一人目にしていた。

テリー以外、あまり強そうではない。

似たようなことをされたけど、昨日の相手ではなかった。

気を取り直して、50円を投入する。

(リベンジしてやる)

今度は俺が乱入者だ。

キャラクターを選び、対戦がはじまる。

またテリーが一番手。

そして・・・・・

「ふっ! パワーチャージ!」

「パワーゲイザー!」

画面端までお手玉されて、何もできないままやられてしまう。

アーケードデビューした俺と、この対戦相手とは腕に雲泥の差があった。

しかし、当時の俺は実力の差など、まったくわからないままがむしゃらに乱入した。

練習用にと奮発した500円をあっと言う間になくなっていく。

ただただ、パワーチャージの餌食になる俺。

実力差がありすぎて、わかっていても攻撃が防げない。

そして、最後の50円も消えた。

お金がなくなって、席を立ち、店をでるために対戦相手の横を通り過ぎた。

この時、対戦相手の横に座っている男が見えた。

(昨日のテリー使いだ!)

たまたまテリー使いがいた訳ではなかった。

同一人物に俺は負かされていた。

けど、ゲームをプレイしているのは別人。

テリー使いは、隣で画面を見ている。

座っている人とは知り合いのようで、画面を眺めながらずっとしゃべっている。

意味がわからなかった。

困惑する俺に気づき、チラチラと俺を見てくるテリー使い。

テリーを意識している訳ではないだろうが、そいつは黒い帽子をかぶっていた。

乱入者が来た。

「お、またカモがきた」

テリー使いは笑いながら、今までしゃべっていた人と席を変わった。

そう、テリー使いは、乱入の時だけ交代し勝つと席をどいて、仲間にCPU戦をやらせていたのだ。

しかも

「こいつもよええなあ。はい、頂き!」

対戦相手をバカにしながら例のパワーチャージで一方的に勝っていく。

まだKOFに詳しくなかった俺では、テリーが何をしているのかわからなかった。

少しあとになって知ることだが、KOF97テリーの

「ふっ! パワーチャージ」は、いわゆる永久コンボと呼ばれるもの。

ゲーム内のバグを利用したもので、ゲームセンターによっては禁止行為になり、トラブルの原因になりやすいものだった。

しかし、この場の俺には想像もつかない。

はっきりわかったのは、このテリー使いは、わざと初心者を狙っているという事だ。

この後も、わざわざ一人で練習している初心者を狙い、乱入しては例の永久コンボを使っていた。

永久コンボなど使わなくても、相手の方が弱いのはわかっているのに。

わざと一方的な試合を見せつけていた。

これがいわゆる”初心者狩り”だった。

しかも、バグ技を利用した悪質なタイプ。

俺のゲーセンデビューは、KOF97テリーの永久コンボと、

初心者狩りによって狩られてしまったのだ。

別の日に50へ通っても、例のテリー使いは仲間と一緒にいた。

本人がいなくても、仲間が呼んでくるのか、すぐにテリー使いが来て乱入してくる。

正真正銘、初心者の俺は、カモとして認識され狙われたのだ。

ゲームをはじめればすぐに乱入され練習することもできず、少ない小遣いも底を尽きた。

相手は倍ぐらいの年齢の大人たち、いつも複数人でつるんでいる。

一人で来て、まだ中学生だった俺は文句も言えない。

KOFをやるのが楽しみで通っていたのに、ゲーセン50からは次第に足が遠のき、ついに全く通わなくなってしまった。

ゲーセン50から姿を消した俺は、数週間後、ある中古ゲームショップにいた。

店内の片隅にある、KOFの筐体の前に。

ゲームセンターの思い出④ ただ、勝つために! KOF97(1997年)へ つづく