20年以上前、ゲームセンターへ通い格闘ゲームと出会った頃のお話し。
今回は第二話、前回からの続きです。
テリー使いとの試合開始。
初対戦、さっきの相手のようなまぐれあたりは全然起きない。
立って待っていれば、地を這う飛び道具、パワーウェイブで動けず、ジャンプすれば対空技のライジングタックル、初心者の俺に対して盤石の対応をしてくる。
一方、俺はガチガチにこわばったままの手と、慣れないレバースティックで、ろくな操作もできないままだ。
家庭用で培った実力など全く発揮できない。
それは相手のジャンプ攻撃から始まった。
飛んだのは見えたが、ジャンプ攻撃を止められない。
対空技を失敗してテリーのジャンプ攻撃を食らってしまう。
ジャンプ攻撃から連続技が決まった。
ジャンプ攻撃から地上攻撃へと繋いでいき、
「パワーチャージ!」
KOF97テリー新技にして代名詞、パワーチャージ。
強烈なタックルで相手を浮かせる技だ。
浮かされると無防備状態で、さらに追加で攻撃されてしまう。
パワーチャージからの追い討ちは、ライジングタックルが定番だ。
追撃までできてしまうパワーチャージは強力だが、もう一度パワーチャージで浮かせることはできない。
普通ならば。
「ふっ! パワーチャージ!」
「え!?」
パワーチャージからパワーチャージが入った。
何が起きたかわからない。
通常なら有り得ない連続技を食らい、永遠とパワーチャージで浮かし続けられる。
あっと言う間にお手玉状態で画面端まで運ばれ、それでも浮かされっぱなし。
この間、俺は何も出来ずに画面を見つめるだけだった。
「パワーゲイザー!」
瀕死で浮かされている俺のキャラクターは、わざわざ超必殺技でとどめを刺された。
2試合目以降も全く同じ展開。
ドタバタしている間に、テリーのジャンプ攻撃が当たり、死ぬまでパワーチャージで浮かされ、わざわざ超必殺技のパワーゲイザーで最後は派手にとどめを刺される。
初めての惨敗。
周囲にはたくさんのギャラリーが見ている中だ。
中学生の俺は、情けなくて恥ずかしくて、逃げるように席を立ってギャラリーの後ろへ走った。
逃げる俺を、対戦相手が見ていた。
薄ら笑いを浮かべているのが見えた。
年齢は20歳~25歳くらい。ずっと年上の大人だ。
俺の後に対戦に入った人は、テリー使いと知り合いらしく対戦台越しに大声で会話しながら戦っていた。
順番待ちの列に並び直す。
派手に負けたけど、KOFが好きだからもっと対戦したかった。
うまく動いたときの、自分のキャラクター達が好きだった。
しばらく連勝したテリー使いは負け、両対戦台で、勝っては負けるを繰り返す。
俺の前の人はなかなか強いようで、連勝したあと乱入されなくなり、ラスボスを倒して全面クリア。
やっと順番が回ってきた。
50円を投入し、使用キャラクターを選び始める。
すると、反対側のギャラリー数人が俺の顔を見て何か話し合っている。
その中にいたのはさきほどのテリー使い。
そいつが席に座り乱入してきた。
(あんなに人がいるのにまたあのテリー使いかよ)
50円投入から、ものの1~2分、あっと言う間に負けてしまった。
必死にジャンプ攻撃を防ごうと立ち回ったが、前転(無敵)で近寄るという新しい動きに対応できず、またしてもパワーチャージでお手玉される。
「パワーゲイザー!」
まるでリプレイ映像のようだ。
逃げるように席を立つのも同じ。
一瞬見えた対戦相手の表情まで同じだ。
違うのは、このテリー使いが後ろに並んでいるギャラリーの数人と笑いながらこっちを見ているところ。
バカにされているのがはっきりわかった。
悔しさと情けなさで、俺は店を飛び出す。
少ない小遣いから出した100円があっと言う間になくなり、大好きなKOFの対戦で、人前でバカにされながら負けた。
なけなしの小遣いをあんなやり方で大好きなKOFで負けて失くした。
悔しく悲しい。
ついてないし、情けない。
弱い自分が恥ずかしくてたまらなかった。
何もできずに負けた自分が許せなかった。
逃げるように帰る際に、笑っている相手とギャラリーの一部、そんな状況の中でも、負けて帰るしかない自分に腹が立った。
悔し涙をこらえ、自転車を漕ぎながら決意した。
練習して絶対に強くなってやる!
休みの日の開店直後なら人も少ない!
誰よりも練習して強くなってやる!
ゲームセンターの思い出③ 初心者狩りとの遭遇 KOF97(1997年)へ つづく